狂った隣人たち
くるみと部屋と向かい合っているその部屋に入ってきたのは1人の男の子だった。


年齢はくるみと同じくらいで、背が高い。


顔は横を向いているからよく見えないけれど、くるみはその男の子から目を離すことができなくなっていた。


どこかで見たことのある雰囲気だ。


とても懐かしくて心が温かくなるような気がする。


この気持ちはなんだろう?


自分の胸に手を当てて首をかしげたとき、男の子がこちらの視線に気がついて顔を向けてきた。


くるみはドキリとして咄嗟に視線を外す。


覗き見していたと思われるだろうか。


すぐに窓を閉めようとしたとき、向かい側の窓が開く音がきこえてきて手を止めた。


「こんにちは」


声に反応して顔を上げると、男の子が顔を出して屈託のない笑顔を浮かべている。


途端にくるみの中にある記憶があふれ出してきた。


あれはくるみが幼稚園時代の頃のことだった。


あの時はまだこの家には暮らしていなかった。


祖父母と一緒に暮らしていたので、幼稚園もそこに通っていたのだ。


「やめてよ!」


途端に小さな頃の自分の声が聞こえてきた気がした。


そうだ、あの時私は同じクラスの男子にイジメられていたんだっけ。
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