狂った隣人たち
自分が恥ずかしくなって「じゃあ、これで」と、家に戻ろうとしたときだった。


「もしかして、祐次と同じ幼稚園だったくるみちゃん?」


と、声をかけられたのだ。


くるみは立ち止まり、振り返る。


「あぁ、そういえば津田さんっていう子がいたなぁ」


祐次の両親は思い出してくれたようで、目を細めている。


「お、お久しぶりです」


さっきよりもぎこちなく頭を下げて、祐次へ視線を向ける。


両親の態度を見た祐次はくるみの顔を見て一生懸命思い出そうとしているようだ。


「そういえば、そんな子もいたような……? ちょっと待って、アルバムがあるはずだから」


祐次はそう言うとくるみが止めるのも聞かずに家の中へと戻っていってしまった。


「くるみ、なんなの?」


外の声が聞こえたようで、くるみの家族も玄関から出てきた。


両親と、聡子も一緒だ。


「お母さん、お隣さん祐次くんおお宅だったの。ほら、幼稚園のときに一緒だった」


説明すると両親はすぐに思い出したようで表情をほころばせた。


「くるみと一緒の幼稚園だった?」


「そうです」


くるみの父親に言われて、祐次の父親がうなづく。


「まさかこんなことがあるなんて」


「偶然ってすごいですねぇ」


母親同士も久しぶりの再開を喜んでいるようだ。
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