狂った隣人たち
「その子は? 弟?」


聡子から後ろからくるみに声をかけてきた。


「そうみたい。会うのは初めてだけど」


くるみと祐次が一緒の幼稚園にいたとき、弟の姿はなかった。


まだ小学生のようだし、くるみが知らないくても当たり前だった。


「名前はなんて言うの?」


くるみはひざを折って弘人に身長をあわせて聞いた。


弘人は警戒したような視線を向けながらも「弘人」と、短く返事をする。


人見知りというよりも、本当にただ警戒しているだけみたいだ。


いずれなれてくれるだろう。


そう思っていると、祐次が幼稚園の卒業アルバムを持って戻ってきた。


「あったよ写真。思い出してきた」


広げられた写真には幼い日の2人が写っていて、なんだか気恥ずかしく感じられてしまう。


写真の中の祐次はキリリとした表情をしていて、くるみの記憶にある勇敢な祐次そのものだった。


「懐かしいわねぇ。このうちはすぐに引っ越してしまったから。他のみんは元気?」


くるみの母親は祐次に向けてそう質問をした。


「同じ高校に入ったヤツもいますよ。だけどだいたいみんなバラバラになっちゃったかな」


「幼稚園の頃だもんな。そりゃそうなるよ」


少し寂しげな表情を浮かべた母親に、父親がフォローしている。
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