狂った隣人たち
☆☆☆

まさか祐次くんの家族が引っ越してくるなんて思ってもいなかった。


くるみは自宅のリビングで幼稚園の卒業アルバムを広げてため息を吐き出す。


「なぁに思い悩んだ顔してんのよ」


聡子が人数分の麦茶を持ってきてテーブルに置いてくれた。


くるみは礼をいい、麦茶を一口飲む。


「なんだかビックリしちゃって」


「それは私も同じ。まさかくるみの同級生が引っ越してくるなんてね。しかも家族構成は――」


「やめなさい聡子」


母親にたしなめられて聡子は途中で言葉を切った。


だけどもう家族全員わかっていた。


大神家の家族構成も今までと全く同じだ。


両親と、男の兄弟2人の4人家族。


これ以外の家族構成が隣に引っ越してきたことは、いままで一度もない。


「今度こそ、なにもなければいいけどな」


父親はテレビ画面へ視線を向けたまま、小さな声で呟いたのだった。

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