狂った隣人たち
「人づてに教えてもらったんです」


「人づて?」


祐次の父親の答えが気になって、くるみはつい質問してしまう。


「直接教えてくれたのは会社の同僚ですが、その同僚も誰かから聞いてきたみたいなんです。だから結局最初は誰が言い出した物件なのかわからないまま。それでも実際内件に着て見ると素敵な家だったので、すぐに決断しました」


人づてに空き家を見つけることなんて珍しい。


今の時代ほとんどの人が不動産屋を通して見つけていると思う。


なんとなく重苦しい空気が食卓に下りてきたそのときだった。


「それよりさ、そっちのお姉さんすっげー美人だね」


弘人が聡子を指差してそう言ったのだ。


一瞬にして場の雰囲気が和らいで笑い声が漏れた。


「そう? ありがとう」


聡子は子供相手に微笑んで見せている。


「俺の好みのタイプ」


調子に乗って弘人が言い、父親に叱られている。


「ごめんね、弘人は生意気盛りなんだ」


祐次がくるみを気にして、呆れた声色で言った。


「大丈夫だよ。弘人くんもとってもかわいいから」


自分に弟がいたらこんな感じなのかもしれない。
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