狂った隣人たち
☆☆☆

祐次と2人で学校へ向かう道のりはなんだか意識してしまってとても長く感じられた。


昨日は家族と一緒だったからいろいろと会話も弾んだけれど、今日は沈黙の方が長い。


「よ、幼稚園の頃の乱暴者を覚えてる?」


話題を探すと、やっぱり2人の共通の思い出になってしまう。


けれどそれは幼稚園時代のことで、片方が覚えていても片方が覚えていなかったりする。


だからくるみは、比較的印象に残りやすい男子のことを口にした。


「あぁ、覚えてるの。浅野だっけ? すごく体の大きい子」


祐次はそう言って自分の腰の横で両手を広げてみせた。


このくらい、大きかったよなぁと懐かしむ声を出す。


「そうそう、浅野くん!」


くるみは意地悪をされたことは覚えていたけれど、正直相手の名前は覚えていなかった。


昨日アルバムを確認したものの、祐次のことばかり探していて他の生徒のことなんて探していなかったから。


そう考えると自分は昨日から祐次のことばかり考えているなぁと思って、内心苦笑した。


久しぶりに出会った祐次が思いのほかカッコよかったせいかもしれない。

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