狂った隣人たち
「あいつ、女子たち全員泣かしてたろ。ああいうのダメだよなぁ」


そう言いながらも声色はとても優しい。


「祐次くんは、あたしを助けてくれたよね」


歩きながらさりげなくあの時のことを口にしてみる。


祐次は覚えていてくれているだろうか。


「え、そうだっけ?」


立ち止まり、祐次は目を丸くしてくるみを見つめる。


くるみも同じように立ち止まり、「そうだよ」と、うなづく。


「あぁ~そっか。俺あの頃戦隊ヒーローに憧れてたからなぁ。なんかごめんね、俺変なこと口走ったりしてなかった?」


再び歩き出した祐次は気まずそうな表情だ。


戦隊ヒ-ローに憧れていた自分はどれだけ恥ずかしいことを言ったんだっけ? 

と、考え込んでしまった。


「変なことなんてなにも言ってないよ」


「え、本当に? なになにレンジャー! とか、言ってなかった?」


くるみは左右に首をふる。


祐次はただ、自分の身を盾にしてくるみを守ってくれた。


その記憶はちゃんとくるみの中に刻まれている。


「なんだそっか、よかったぁ」


祐次は心底安堵したように大きなため息を吐いたのだった。
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