狂った隣人たち
「昨日の殺人事件のニュースみたんだけどさ、あれってくるみの家の近くだよね?」


無遠慮に聞いてくるリオだけれど、一応くるみの家の近くだと言う部分だけ音声を落とした。


「うん。隣の家なんだよね」


くるみはため息を吐き出しつつ、答えた。


同時にカバンの中の教科書やノートを机にしまっていく。


「やっぱりそうだったんだ」


リオの両眉が下がり、心配しているのがわかった。


「私は全然平気だよ?」


そう言うと、リオは少しだけ安心したような表情になってうなづいた。


そして今度は路地に集まってきていた野次馬たちと同じような表情に切り替わった。


それはどこかにスイッチでもついているんじゃないかと思うような早業だった。


「それで? 隣ってことはなにか聞こえたりしたの?」


目をキラキラと輝かせているリオにくるみは苦笑を浮かべた。


普通近所で殺人事件が起こるなんてそう何度も経験することじゃない。


特にこんな田舎町では、大きな事件は滅多に起こらない。


ご近所さんとはみんな顔見知りだし、部外者が歩いていればすぐに気がつく。


そんな町なのだ。


「悲鳴みたいなものが1度聞こえてきたんだけど、それだけだよ」


くるみは素直に答えた。


たったそれだけの返答だったのに、リオの好奇心は更にくすぐられることになったみたいだ。

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