狂った隣人たち
☆☆☆

自己紹介のときに黄色い声が聞こえてきたように、祐次の人気はあっという間に広まってしまった。


休憩時間になった途端クラスの女子たちが祐次の机を取り囲み、くるみはその場にいづらくて教室後方へと逃げてきていた。


『カッコイイ転入生が来ている』という噂ももう随分広まっているようで、廊下にも女子生徒たちの人だかりができている。


まさかここまで人気になるとは思っていなくてくるみは嘆息する。


登校中はすぐ隣にいた祐次が、今はもう手の届かない場所へ行ってしまったように感じる。


「転入生と知り合いってどういうこと? どうして教えてくれなかったの?」


頬を膨らませて怒りを滲ませながらそういってきたのはもちろんリオだ。


「説明してなかったっけ?」


くるみはとぼけたフリをしてみせる。


「しかも家が隣とか、幼稚園が一緒だったとか、フラグ立ちすぎでしょ!」


「フ、フラグなんて立ってないし!」


慌てて否定してみても、またくるみの顔は真っ赤に染まってしまっている。


祐次のことを意識しているのがバレバレだ。


「でもまぁ、ライバルは多そうだよねぇ」


祐次の席へ視線を向けてリオが呟く。


クラスの半分以上の女子たちが祐次と会話するために集まってきている。


おかげでくるみの席まで埋まってしまっていた。
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