狂った隣人たち
「あぁ、お姉ちゃんのことすごく気に入ってたよね」


思い出してくるみは笑う。


小学校5年生の弘人にナンパされた聡子はたじたじだった。


系統は違うけれど弘人も祐次と似ていてカッコイイ。


弘人が20歳くらいならチャンスはあったかもしれないのに。


「普段はあんなふうに女の人に絡んだりはしないんだけどな。昨日は引っ越してきてテンションが上がってたんだと思う」


「気にしないで。弘人くんもイケメンだから、今頃新しい小学校でモテモテなんじゃないの?」


そう言うと祐次は「知らない」というように肩をすくめて見せた。


「ここが図書室」


会話をしているといつの間にか図書室の前に到着していた。


戸を開けて中に入ると天井まで届きそうな書架が並んでいる。


書架と書架の間に長いテーブルが尾かれていて、今も数人の生徒たちが読書や勉強をしている最中だった。


2人は無言のまま図書室の奥へと移動した。


その棚にはDVDやCDなどが並べられていて、本と同じように貸し出しできるようになっているのだ。


「すごいね。まるでツタヤだ」


有名ビデオ店の名前を出した祐次に微笑む。


「図書室は私もよく利用するよ。新作映画とかでも、すぐに借りれるようになるから」


「そっか。俺もリピーターになろうかな」


祐次がそう言うのでくるみは視線を合わせて笑い合ったのだった。
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