狂った隣人たち
「でも、まだ引越しの片付けが残ってるんだよな」


祐次が頭をかきながら答える。


「そんなの痕からでもできるじゃん」


断られると悟った女子生徒はくいさがる。


「そういうわけにもいかないよ。家族みんなで手伝わないといけないことなんだから」


そう言われると次の言葉が出てこないようで黙りこんでしまった。


2人のやりとりに耳をそばだてていたくるみはホッと胸をなで下ろす。


と、同時にそんな自分に驚いていた。


クラスメートと仲良くなることは悪いことじゃないのに、どこかで嫉妬していたみだいた。


女子生徒はそれでも名残惜しそうな表情を残したまま、祐次から離れていった。


「行かなくていいの?」


一応、そう声をかけてみる。


「うん。くるみが行ってほしくなさそうだったから」


そう言われてくるみは目を見開いた。


そんなにわかりやすかっただろうかと、自分の頬を両手で包み込む。


聡子からもニヤつていると指摘されたし、気をつけないといけない。


そう思っていると祐次がプッと噴出した。


「冗談だよ。くるみって本当にわかりやすいね」


と、くっくと笑いながら言う。


どうやらイジられたようだと気がついたくるみはぷぅっと頬を膨らませたのだった。
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