狂った隣人たち
昔起こった殺人事件の様子がありありと脳裏に浮かんできて思わず立ち止まってしまう。


片手で口元を押さえてこみ上げてくるものを飲み込む。


「くるみ?」


突然立ち止まったくるみに驚き、祐次が顔を覗き込んできた。


「顔色が悪い。大丈夫か?」


「平気。ちょっと、嫌なことを思い出しただけ」


そう言ったが、祐次は近くの公園に身買ってくるみをベンチに寝かせてくれた。


視界一杯に見える青空がとても爽やかで、嫌な記憶が奥のほうへ引っ込んでいくのを感じる。


「ソーダでよかった?」


声をかけられて見ると、祐次が自販機でジュースを買ってきてくれていた。


「ありがとう」


体を起こして炭酸飲料を飲むとかなりスッキリとした気分になった。


顔色も戻ってきて、祐次がホッとしたように息を吐き出す。


「心配かけてごめんね。明日ちゃんと伺うから」


「別に無理しなくていいよ」


「ううん。私が行きたいの」


祐次のことをもっと知りたいと思うし、あの家についてもなにかわかるかもしれないという期待があった。


「……わかった。じゃあ3時に待ってるから」


祐次に言われ、くるみはうなづいたのだった。
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