狂った隣人たち
そしてその当時は別の人が隣の家に暮らしていた。


苗字はもう忘れてしまったけれど、ほんの2、3年で引っ越して行ってしまったはずだ。


「12年間で何度も隣人は変わってるの。その中で殺人事件が起こったのは私が小学校4年生だったころだよ」


リオは固唾をのんでくるみの次の言葉を待っている。


くるみは苦い記憶がよみがえってくるのを感じていた。


あれは小学校4年生の頃のこと。


くるみは9歳で、今と同じあの部屋を使っていた。


あの日もくるみは自室で漫画本を読んでいた。


今日発売で、買い物にいく母親について出かけて買ってもらったばかりのものだった。


当時はくるみの大好きな戦隊ヒロインものの連載が架橋を迎えており、見逃せない回だった。


ドキドキしながら本のページをめくり、時折お皿に乗っているドーナツに手を伸ばす。


ドーナツについているチョコレートで指先がベトベトになっても気にならないくらいに漫画に集中していたときだった。


ゴトンッ! と、大きな物音が聞こえてきて漫画から視線を上げた。


今の音は1階からだろうか?


お母さんがなにか落としたのだろうか?


そのわりにお母さんの声は聞こえてこない。


なにか落としたのであれば、小さな悲鳴や声が聞こえてきそうなのに。
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