狂った隣人たち
リビングのソファに座ってゲームをしている弘人へ向けて声をかける。


弘人は自分のことを言われているのにまったく画面から視線を動かそうとしない。


両親はさっきから弘人の診察券を用意したりとせせこましく動いていると言うのに。


見かねた祐次は弘人の肩を叩いた。


「おい、出かける準備をしろよ」


少しきつい口調で注意する。


しかし弘人は返事をしない。


それどころか声をかけた祐次を見ようともしなかった。


視線は画面上で動き回るキャラクターに釘付けだ。


「おい弘人、いい加減にしろよ。お前のことを心配してるんだぞ！？」


祐次は弘人の手からゲームのコントローラを奪い取り、怒鳴った。


瞬間弘人がこちらを振り向く。


ようやく会話ができると思った次の瞬間だった。


突然弘人は牙をむき、祐次の腕に噛み付いたのだ。


「うわっ！？」


先に驚きで声がでた。


次に犬歯が皮膚に食い込んでくる痛みでうめき声を上げる。


咄嗟に腕を引こうとしたが、信じられない力で噛み付かれていて逃げ出すことができない。


「ちょっと、なにしてるの！」


異変に気がついた両親が慌てて駆け寄ってくる。


母親と父親が２人がかりで弘人を後ろから引っ張ると、ようやく口を離したのだった。


祐次の腕にはくっきりとした歯型が残されていたのだった。
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