狂った隣人たち
ひとりで机のラクガキを消していると数人の女子たちの間から含み笑いの声が聞こえてきた。


その声はとても小さかったのにくるみの胸に突き刺さる。


体が熱を持ち、屈辱感と羞恥にさいなまれる。


くるみは顔をあげることもできず、黙々と机を掃除するのだった。


「なにしてるの？」


残った「バカ」という文字を消そうと手を伸ばしたとき、その手は大きな手によって掴まれていた。


一瞬心臓が跳ね上がり、ゆるゆると顔をあげる。


いつの間に戻ってきたのは目の前には祐次が立っていた。


険しい表情でくるみの机のラクガキを睨みつけている。


まるでそこに憎らしい相手がいるとでもいうように。


「べ、別に、なにも」


咄嗟に笑顔を作った。


しかし祐次は握り締めている手の力を強めた。


「さっき笑ってたの、誰？」


含み笑いも気かれていたようで、全身かカッと熱くなる。


こんなの見られたくなかったという思いと、イジメられているなんて恥ずかしいという感情が波のように押し寄せてくる。


当然、祐次の質問に返事をする生徒は誰もいなかった。


興味津々でくるみの一挙一動を見ていた生徒たちも、今は知らん顔を決め込んでいる。
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