狂った隣人たち
母親は額に汗を滲ませて念仏のようにそう言い、くるみの体を抱きしめた。


その数秒後、外から女性の断末魔が聞こえてきたのだった。


よみがえってきた記憶を振り払うようにくるみは強く首を振った。


「大丈夫? 顔色悪いよ?」


そう聞かれて視線を向けるとリオが心配そうに覗き込んできていた。


くるみは薄い笑いをうかべて「平気」と、返事をする。


最近ではあまり思い出すこともなかったのに、昨日の事件のせいで生々しく思い出してしまった。


あれを見て1年間くらいは悪夢にうなされていたものだ。



「ごめんね、いやなこと思い出させちゃって」


「大丈夫だよ。それにあんな事件があったら、しばらく隣に引っ越してくる人もいないだろうしね」


くるみがそう言うと、リオは「どういう意味?」と、首をかしげたのだった。

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