狂った隣人たち
「なんなんですか?」


やがて津田家の母親が玄関から出てきた。


同時に祐次の父親の姿を見て悲鳴を上げる。


「殺してやる! 淫乱女を殺してやる!」


怒鳴りながら包丁を振り回す父親。


その腰にすがりつくようにしてどうにかとめようとしている祐次。


「あんたたち、なんなんだ一体!」


津田家の父親が傘を握り締めて応戦する。


その奥にくるみの姿を見つけて、一瞬視線がぶつかった。


くるみは今にも泣き出してしまいそうな顔でこちらを見ている。


その瞬間祐次の手の力が緩んでしまった。


自分が守ると言ったのに。


くるみにとっての戦隊ヒーローになろうと誓ったのに。


なのに……。


父親が祐次の体を振り払い、祐次はその場にしりもちをついてしまった。


「死ねぇ!!」


包丁を振り上げる父親。


「やめろっ!」


叫ぶ祐次。


時間がスローモーションのように流れていく。


父親の持つ包丁がくるみの父親の頭上へ迫ったそのときだった。
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