狂った隣人たち
「あなたなにしてるの? ご飯よ?」


気の抜けるような声がした。


視線を向けるとお玉を持った祐次の母親が立っている。


こんなときになにを。


そう思った矢先、父親が包丁をゆっくりと下ろしていた。


「おお、そうか」


さっきまでの鬼の形相はどこへやら、にこやかに微笑むと母親と肩を並べて帰っていく。


祐次は呆然として2人の後ろ姿を見送った。


「祐次」


か弱い声に呼ばれてハッと息を飲んで我に返った。


くるみが怯えながらこちらを見ている。


「ごめんくるみ。本当にすみませんでした」


祐次はくるみとくるみの両親に深く頭を下げる。


警察に通報されるかもしれないが、今はそれ所じゃなかった。


あの3人は次になにをしでかすかわからない。


祐次は転げるようにして自分の家へと駆け出した。


乱暴に玄関を開けてキッチンへ向かうと、すでに夕食の準備が整っていて3人とも椅子に座っていた。
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