ママの手料理 Ⅱ
“パパの手料理”は、mirageの中でも超の付くほどのナルシスト、伊藤 仁(いとう じん)と服役中の早川 伊織(はやかわ いおり)が経営しているタピオカ店だ。
仁の手伝い、と言っているけれど、彼女の事だからきっとまた無料のタピオカをねだるのだろう。
一瞬俺と目を合わせた湊は、すぐに彼女に向かって微笑んだ。
「いいよ、行ってらっしゃい」
「じゃあね!」
俺も、レジの目の前に座りながらばいばい、と手を振る。
湊さんと俺の声に手を振り返した彼女は、スキップをしながらママの手料理を出て行った。
その後ろ姿が、やけに瞼の裏に焼き付いて離れなかった。
夕方。
(そろそろバイトか…)
全く手伝う気配のない銀子ちゃんを渾身の力で睨みつけながらレジ打ちを続けていた俺は、店の壁に掛けられた時計の短い針が5をさしたのを見て立ち上がった。
今日のバイトは夜から朝方までで、他のホスト達と共に愛に飢える女性達の相手をするのだ。
(今日も頑張ろう…)
自慢ではないが、俺は容姿端麗という単純な理由だけでホストの世界に足を踏み入れた。
しかし、女性に恋愛感情を持たない俺は今までずっとこの仕事が自分に合っているか悩んでいた。
まあ、お店の看板ホストにまで成り上がった今となっては開き直ってしまったのだけれど。
仁の手伝い、と言っているけれど、彼女の事だからきっとまた無料のタピオカをねだるのだろう。
一瞬俺と目を合わせた湊は、すぐに彼女に向かって微笑んだ。
「いいよ、行ってらっしゃい」
「じゃあね!」
俺も、レジの目の前に座りながらばいばい、と手を振る。
湊さんと俺の声に手を振り返した彼女は、スキップをしながらママの手料理を出て行った。
その後ろ姿が、やけに瞼の裏に焼き付いて離れなかった。
夕方。
(そろそろバイトか…)
全く手伝う気配のない銀子ちゃんを渾身の力で睨みつけながらレジ打ちを続けていた俺は、店の壁に掛けられた時計の短い針が5をさしたのを見て立ち上がった。
今日のバイトは夜から朝方までで、他のホスト達と共に愛に飢える女性達の相手をするのだ。
(今日も頑張ろう…)
自慢ではないが、俺は容姿端麗という単純な理由だけでホストの世界に足を踏み入れた。
しかし、女性に恋愛感情を持たない俺は今までずっとこの仕事が自分に合っているか悩んでいた。
まあ、お店の看板ホストにまで成り上がった今となっては開き直ってしまったのだけれど。