ママの手料理 Ⅱ
正直、私の何が駄目だったのか分からない。


自分の気持ちに蓋をして言われるままに行動して、ご主人様に全てを捧げた。


下僕養成所からご主人様に買われるには、“下僕オークション”で高値で買取ってもらわなければならず、そのオークションで売れ残った下僕や返品された下僕は価値がないのと同然の扱いを受ける。


人身売買も行う怪盗パピヨンは、そうした無価値な下僕を売り払ってたんまりと金を稼いでいた。


だから、正直に言うと私も人身売買される運命のはずだったのに。


「うーん…、クイナちゃんは成績も良かったしねぇ。あなたにはもう一度チャンスをあげるわ。ただし、次売れ残ったり返品されたらもう未来は無いわよ」


元々養成所での成績が良かった私は、運良くその道を免れたのだ。



そして、血と汗と涙を流しながら、言葉通り死ぬ気で実習を続けた私は。


返品の屈辱を味わってから約2年後、人生2度目となる“下僕オークション”に臨もうとしていた。




「あの…私達、良いご主人様に出会えますよね?」


オークションが始まる為、参加資格の与えられた下僕は全員別室に集められていた。


何十個ものキャスター付きの檻が横一列に並んでいる。


その1つの檻の中にいる私に向かって、隣の檻にいる0823番が話しかけてきた。
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