ママの手料理 Ⅱ
「…もちろん、出会えるに決まってるよ」


「まあ、オークションに成功して、無事に買い取り先が現れればの話だけどね」


私と共に答えるのは、反対側の檻でボロボロになったくしを使って髪の毛をとかしている1212番だ。


「えー、何で1212番さんそんなに冷たいんですか!0917番さんみたいに優しい言葉かけてくださいよ、さっきから緊張して足が震えてるんです、!」


「そんな事言われても…。外の世界は甘くないから、優しい言葉なんて掛けてあげられないわよ」


緊張のせいか身体をしきりにさすっている0823番に向かって、1212番は容赦ない言葉を投げ掛けた。


「まあまあ…。中には良いご主人様に当たって楽しんでる下僕もいるから、そんなに心配しなくて大丈夫だよ」


「そうですけど、でも…0917番さん、オークション2回目じゃないですかぁ…」


彼女を安心させようとしたはずが正論を言われて、ぐっと言葉につまる。


「で、でも、下僕養成所よりは外の世界の方がましだから!これは本当、信じて!」


何とかフォローしようとしたものの、0823番は信じられないと言いたげな目をこちらに向けてきて、私は諦めて乾いた笑みを浮かべた。
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