ママの手料理 Ⅱ
これからオークションに出されるからメイクを許可されたというのに、0823番は一粒の涙を流した。


「違う、女子だけじゃない。男子もよ」


1212番がそう言ったその時、


「お前達、オークションの準備が整った!今すぐ檻から出て2列に並べ!」


怪盗パピヨンの1人である見張りの人が大声を出した。


瞬間、私達は口を閉じて一斉にお辞儀をする。


「「「かしこまりました、仰せのままに」」」



「ねえ、男子もってどういう事なの?」


2列に並んで静かに移動する最中、私は前を歩く1212番に小声で尋ねた。


1212番の隣を歩く0823番も、耳だけはこちらに傾けている事だろう。


「…言葉の通りよ。怪盗パピヨンは女だけの組織だけれど、男の下僕も育成しているって噂があるの。…全部、あの酷いご主人様のせいね」


背筋を伸ばして歩きながら、先輩下僕がほぼ口を動かさずに答える。


「そんな……」


「だから、もしも売れ残ったり返品されたら、次はその係になってまた会いましょう」


目を潤ませる0823番の方に顔だけ向けた1212番は、優しい笑顔を作って語り掛けた。


「あなた達に会えると思えば、私も頑張れる」


あと数時間で、私達は永遠に離れ離れになる。
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