ママの手料理 Ⅱ
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「…その髪飾り、どうしたの?」
“大也”という人に電話をかけてから数日後。
私は、至って普段通り振る舞っていた。
お昼に大盛りのサラダと3粒の飴を持ってきた0823番は、胸まである髪の毛をいつものように結いていたけれど、その髪留めは見た事のない蝶の柄をしていた。
少し大きくて、ピンク色の蝶が羽根を広げたその髪飾りは0823番に良く似合っている。
「…ああ、これですか」
何処か元気がなさそうな彼女は、床にサラダと2人分のお皿とフォークを置き、俯き加減で微笑んだ。
「これは……、0114番様と家を抜け出した時に一緒に買ったものです。今まで恥ずかしくて付けていなかったのですが、どうでしょうか?」
彼女の言葉を聞いた瞬間、まるで雷に打たれたような衝撃を受けた。
(それ、私とっ……?)
可愛いと思った髪飾り、まさか私と一緒に買っていたなんて。
けれど、私はその記憶すらないしそもそも同じものを持っていない。
何て申し訳ないことを…、と、私はうなだれた。
「…ごめん、私やっぱり何も覚えてないみたい。一緒に買ったはずなのに、私はそれ持ってないみたいで、」