ママの手料理 Ⅱ

｢あっ、いえ、大丈夫ですよ！何も考えずに無礼な事を言ってしまい申し訳ありません。…0114番様の分も、実は私が持っているんです！｣


下唇を噛み締めて謝罪の言葉を述べると、私の下僕は弾かれたように顔を上げてふるふると首を横に振った。


｢あ、そうなの？｣


私の問いに頷いた彼女は、


｢私はもう1つ同じものを持っていますので、こちらをおつけになりますか？｣


と、付けていた髪飾りを外しながら尋ねてきた。


(えっ、いいの…？)


困惑しながらも、手を伸ばしてそれを受け取ると。


｢私も、後で同じ髪飾りを付けて参ります。0114番様の方がお似合いですよ。ほら｣


彼女の棒のように細い腕が私の髪をすくい取り、瞬く間に髪の毛が結われ始める。


｢髪飾りをお貸しください。…0114番様、とてもお綺麗ですよ｣


傍にあったスマホの画面を鏡代わりにして見ると、私の髪の毛には確かに桜色の蝶々が止まっていた。


｢あっ、本当だ…！綺麗だね、これ貰ってもいいの？｣


そっと髪飾りに触れながら尋ねると、彼女は不思議そうな顔をして。


｢何を仰るのですか、0114番様。それは元から貴方様のものですよ？｣


いつもの如く、花が咲いたような優しい微笑みを口元にたたえた。