ママの手料理 Ⅱ
「あ、取り乱してしまい申し訳ございません…。それで、相手の方は何と仰っていましたか?“警察”と言っていましたか?」


「ん?けい、さつ…じゃなかったと思う…?」


その後0823番の口をついで出た不可解な言葉に、私は眉を寄せた。


「なんか、ホストがどうこう…大也って名前の人が電話に出てくれて、自分がそこに行くまで待っててみたいな事を言われたよ」


取り敢えず、覚えている事を掻い摘んで説明すると。


「ホスト…大也、なるほど…」


0823番は、難しい顔をして考え込んでしまった。


その感じから察するに、私はもしかしたら0823番が思っていたのとは見当違いの人に電話をかけてしまったようで。


(なんか間違えたかも、)


取り返しのつかない数日前の失態を思い浮かべ、頬をポリポリと掻く事しか出来ない。



「多分、大丈夫だと思いますよ」


十数秒後、黙り込んでいた下僕がゆっくりと口を開いた。


「電話が繋がっただけでも奇跡なんです。…ですから、その方が此処に来てくれるのなら、それまでの間は私が命にかえて貴方様をお守りします」


どうやら、彼女の中で全てが自己完結してしまったようだった。


何が“ですから”なのか、何故私が守られなければならないのか全く分からないまま。


微妙になってしまった場の空気を変えようと、私は、そうだね、と曖昧に頷いておいた。
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