ママの手料理 Ⅱ
彼女の瞳からもまた、本日2度目の涙が零れていた。


「……かしこまりました、0114番様。私も貴方様と行動を共に出来て、思い出を作る事が出来て、誠に幸せでした」


たかが食器を置きに行くだけのくせに、まるでこれが最後みたいな言い方をしないで。


どうして頬がこんなに濡れているのか、未だに理解が追いつかない。


「…何かありましたら、ベルを鳴らしてお知らせ下さいませ」



私達は数秒間無言で見つめ合ったけれど、先に目を逸らしたのは下僕の方で。


お決まりのその言葉を告げた彼女は、ゆっくりと扉を閉めた。


鍵がかかったのを確認した瞬間、私は3つ目の飴を吐き出して毛布に顔を埋めた。


鎖が擦れたせいで真っ赤に変色した左手首が痛くて、それのせいもあってまた毛布が濡れていく。




その日、それから私が何度鈴を鳴らしても何度声を張り上げても、0823番が現れる事はなかった。




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