ママの手料理 Ⅱ
これから俺は紫苑ちゃんを盗みに行くのだ、そこに余計な情を持ち込むのは止めにする。


仁の事は死ぬ程嫌いだけれど、もうここまで来たら腹を括るしかない。


「じゃあ、行ってくるね。…仁、行こう」


「え、何勝手に主導権握ってるの?最年長は僕でしょう、君は黙って後ろから着いてくればいいんだよ」




…前言撤回だ。


こいつまじでうるさい、埋めたい。







…とまあ色々あったものの、俺と仁の2人は中腰になりながら紫苑ちゃんが居るはずの建物にじりじりと近づいて行った。


その建物は廃校となった学校で、とにかく校庭が広い。


本当は裏口から入りたかったものの、そこに行くまでの間に怪盗パピヨンにばれてしまう恐れがあった為、俺達は仕方なく校庭の端を通って1階の教室の窓から潜入する事にしたのだ。



「ねえ、今の僕達の位置結構ばれやすくない?周り砂利しかないじゃん。誰この建物と校庭設計した人、一旦ぶち殺したいなぁ」


「…同感」


今だけは、仁の言う事が正しいと感じる。


どうしてこんな所に怪盗パピヨンは罪のない子供達を捕らえているのだ、どう考えてもおかしい。


『此処は辺鄙な場所だから、人が寄り付かない。黒木温泉のアナウンスが聞こえたのは周りに大きな障害物がないからで、実際はバスは予想以上に遠くを走ってるんだ。紫苑云々関係なしに、この場所の事をサツが気付かなくて当然だろう』
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