ママの手料理 Ⅱ

途端、無線機から銀子ちゃんの淡々とした声が流れ込んできた。


｢なるほど。それにしてももう少し派手に攻め込みたかったね…。mirageの内のたった2人が忍び込むなんて、まるで出来損ないの泥棒みたいで泣けてくるよ｣


｢怪盗も泥棒も同じもんでしょ｣


｢響きが違うんだよ、馬鹿だなぁ君は本当に｣


ハッカーの説明を聞いて小声で仁と言い合いをしながら進んで行った俺達は、いつの間にかおんぼろ校舎の目の前に到着していて。


(お、早い！)


と思ったのも束の間。


背後からウィーンという小さな機械音と共に小型のドローンが飛んできて、小さな風を巻き起こしながら俺達の横をすり抜ける。


｢何この音、蚊みたいで嫌なんだけど｣


仁の舌打ちを俺はしっかりと無視した。



『電気は所々付いてるな…お、1階の水道近くの窓が開いてる、此処から侵入出来るぞ。…ん？人が居るな…何だこれ、』


ドローンを操作しているであろう銀子ちゃんの低い声が、急に途切れた。


｢何かあった…？｣


『おい、そこに笑美居るか？居るならこの画面見せろ。こいつは何だ？死んでるのか？』


屈んだ体勢のまま小声で尋ねたものの、彼は俺の言葉を完全に無視して家で待機しているmirageに話し掛けた。


『…笑美です。……その方は、生きていると思われます。下僕になる、直前の方かと…』