ママの手料理 Ⅱ
｢ふーん…あんたが染井佳乃？怪盗パピヨンのリーダーだよね？｣


自分の目の前でしゃがみ込んだままの仁を一瞥し、俺が女性ー染井佳乃ーに向き直って睨みつけると。


｢……あら、誰からその名前を聞いたの？｣


最初こそ顔が強ばったものの、次の瞬間彼女は余裕そうな笑みを浮かべて鼻で笑った。


｢そういうあなたは怪盗mirageね。こんな辺鄙な場所に何の用かしら？下僕が欲しいなら近々オークションをやるからその時に｣


｢ねえ、人の話くらい真面目に聞いててよ｣


瞬時に正体を見破られる事くらいは計算内だ。


そんな事より、こんな行いをしているにも関わらず悪びれている様子を見せない彼女にかなりむかついていた俺は、懐から銃を取り出して構えた。


｢紫苑ちゃんは何処って聞いてんの｣


俺の銃口が火を噴き、染井佳乃の持っていたハイヒールを吹き飛ばす。


｢あのハイヒール、結構なお値段がしたのよ。弁償してくれるのかしら？｣


｢お前が死ねば弁償もクソもないでしょ｣


煙が上がる銃口をふっと吹いた俺は、不敵な笑みを浮かべて彼女を睨みつけた。


確かに廊下の電気は消えているけれど、外から微かに入ってくる月の光でお互いの姿は捉える事が出来る。


｢…暗闇でも分かるその白銀の髪、あなたは怪盗mirageの大也ね。あなたの前にしゃがんでる人は誰かしら？車酔いでもした？｣
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