ママの手料理 Ⅱ
「おい」


その時、急に部屋のドアが開いて誰かの声がした。


「ほえっ?」


信じられない程情けない声を出しながら振り返った俺は、その人物を見て瞬時に顔が熱くなるのを感じた。


「…お前、大丈夫か」


ああもう、だからどうして君はそんなに優しい声を掛けるんだ。


心配の言葉を貰えるなんて光栄過ぎて、逆に死期が早まった。


その声の主は俺の返答も聞かずにずかずかと部屋に入ってきて、まるでここが自分の縄張りだと言わんばかりに椅子に座って足を組んだ。


「…俺、いつも大丈夫だけど?」


「どの口が言ってんだよ」


そんなに人を射殺すような目で見られたら、言い訳も何も出来るわけがない。


俺は、部屋の中央に立って琥珀の組まれた足を見ながら口を開いた。


「…琥珀も、やっぱり俺のせいで嫌な思いしてるよね」


いつもなら誰よりも先に寝たがる琥珀が起きていたのは、俺の帰りを待っていたからだ。



琥珀は、何も返さなかった。


「だって…琥珀って格好良くてスタイル良くてすごいモテるのに、彼女作らないのは俺が馬鹿みたいに重いからでしょ?俺が嫉妬するから…。それに、紫苑ちゃんみたいにやっぱりこんな奴おかしいって思ってるんだよね?俺もつくづくそう思うよ」
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