ママの手料理 Ⅱ
「……ぇ?何言ってるの俺が」


「違う、俺が悪い」


半ば畳み掛ける様なその言葉に、俺は何も言えなくなって口を噤んだ。



「あの時、俺がチビに言えば良かったんだ。驚いて拒絶したくなるのも分かるが、ただ黙って理解して欲しい…って」


もどかしいのか頭を掻きむしる彼の表情からは、自責の念が見え隠れしていた。


「あいつは1度はお前の事を受け入れた身だ。今は記憶が無くなってるからあんな反応を取ったんだろうが、流石に本気で拒絶しねーと思う」


真っ直ぐに俺の目を捉えたその瞳は、凛とした輝きを放っていた。


まさか琥珀がそんな事を考えていたなんて露ほども思っていなかった俺は、どう反応していいか分からなくて視線を泳がせた。



「それと、」


暫く沈黙が流れ、啖呵をきったのはやはり琥珀の方だった。


「言うか言わないか迷ってたんだが…別にお前は俺にとって迷惑じゃない。俺はお前とそういう関係になれねーから、嫌いになるならなればいいし、その辺はお前が好きにしたらいい。…ただ、」


急に、淀みなく話していた琥珀の声が不自然に途切れた。


その場で俯いていた俺が目線を上げると、彼は眉根を寄せながら言葉を探していた。
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