ママの手料理 Ⅱ
こんな訳の分からねぇ狂った母親と、その手下みたいになりやがった兄弟達と死んでも一緒に居るなんて耐えられなかった。あんな奴らと一緒に死にたくなかった。最後に“大好き”って言ったものの…俺は逃げた。

全員が首を吊って死んだ中、首に縄をつけたままその中を逃げた。走って走って走った先があの養護園だった。

そこでは皆が俺を受け入れて、無償の愛をくれた。嬉しかった。誰も精神崩壊してないし、愛を強要してこない。

…でも、そいつらをまた失うのが怖かった。俺に愛をくれて、俺がそれに応えた奴は死んだんだ。そんな過ちは二度と繰り返したくなかった。

……だから俺は、何も好きにならねぇって決めた。

この家に来てからも、俺は誰に対しても好きだと言ったことはねぇ。一緒に居て居心地が良くても、口に出した瞬間そいつが死んじまうんじゃねーかって思ったら、言えなかった」



そうだ、琥珀が養護園に来たのは一家心中を免れたからだ。


あの時俺はまだ幼かったけれど、いきなり首に縄をつけた少年がやってきた時の衝撃は覚えている。



(そうだよ、琥珀、“好き”って言ったことないじゃん…!)


彼の昔話を聞いて、納得する点がいくつもあった。
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