ママの手料理 Ⅱ
(へ?)


そう言われ、冷静に周りを見渡してみると。



「あら……俺、入ってくる部屋間違えたみたい?てへっ」


死ぬ程恥ずかしいミスをしていた事に気がついた。


「何が“てへっ”だ。部屋に戻ろうと思ったらお前が俺の部屋入ろうとしてて驚いたわ。何だか様子もおかしかったしよ」


「え!じゃああの時“大丈夫か”って言ってくれたのは、俺をガチで心配してた訳じゃなくて…」


恐る恐る尋ねると、


「許可なしに他人の部屋に侵入するお前の頭が心配だったんだよ馬鹿野郎」


淡々と返答された。


「じ、じゃあ、今までずっと起きてたのは…?」


「チビの事を中森に連絡してたからに決まってんだろアホ」


…何だこの展開は、俺が想像していた斜め上を行っている。


(俺が全部勘違いしてたって事!?)


あんぐりと口を開けた俺を見て、琥珀が舌打ちをした。


「分かったらさっさと部屋戻れ。俺寝るから」


「あー何か眠くなってきちゃった、部屋戻る前に倒れそう!やばいやばーい、まぶたが重い…」


既に泣き止んでいた俺は、彼の憎しみの籠った言葉を無視してベッドに寝転んだ。


ここまで来たら、一緒に寝るしか選択肢はない。


「………お前、ぶち殺してやろうか」


「またそんな事言っちゃって、俺が本当に死んだら悲しくて泣いちゃうくせにー!ほら、眠いなら隣おいでよ一緒に寝よう」
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