ママの手料理 Ⅱ
『貴方様を誘拐したのは、大叔母様…染井佳乃様です。車の中で飴を舐めさせることで、紫苑様の記憶を失わせました。誠に申し訳ございませんでした』


画面の中で、下僕が深く頭を垂れる。


時を同じくして、私はふるふると首を横に振った。


『私が担当してきた人達は皆、優秀な下僕となって世の中に巣立っていきました。…ですが、私はもうこの残虐なシステムに従順するのに疲れてしまったのです。…私は、紫苑様をどうにかして助けたいと考えました』


そうか、ハナは私にやったのと同じ手口で何人もの人を洗脳させて下僕にしていったのか。


けれど、そんな中でも私を助けようとしてくれた勇気には脱帽しかない。


染井佳乃の地獄耳ならぬ地獄目をかいくぐり、私にスマホを渡したり色々なヒントを出してくれたのだから。


『今の紫苑様は、私の考えた嘘の話を頭から信じ込んでおられます。…仕方の無いことです』


ブレブレの画面の中、彼女は俯いて反省している顔を浮かべた。


『ですが、この動画を撮り終わった後、私は紫苑様にこのスマホを渡したいと考えています。パスワードは823114に変更しましたが、簡単なので開けられる日は近いと信じております。また、緊急電話番号から110に連絡できるように誘導し、紫苑様の助かる機会をお作りします』


なるほど、この動画は私にスマホが渡る前に撮っているのか。
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