ママの手料理 Ⅱ
彼女は自分がしようとしている計画の全てをこの動画に記録し、私が助かった後に見れるように考えていたわけだ。


(そうだよね、110…私、間違って大也のバイト先に電話しちゃったけど)


あの時は必死だったあの出来事も、今となっては恥ずかしい黒歴史。


『…ロック画面の背景は、“紫苑”という花の画像に変えさせて頂きました。例え花の名前でも、自分の名前とあれば何か思い出すかもしれません。偶然、花言葉も“君を忘れない”でしたので、紫苑様の記憶が蘇る可能性も高まるかと考えました』


彼女は、淀みなく未来の私に向けて自身の計画を伝え続けている。


「だから、背景があの花だったんだ……」


せっかく作ってくれたヒントなのに、気づかなくてごめんね。


私は、ふーっと大きく息を吐いた。



『………例え大叔母様の命令だとはいえこのようなご無礼を働いた事、誠に申し訳なく思っております。…もし神が私達に味方して、紫苑様の味方が助けに来てくれた場合は、』


淡々と話し続けていた彼女は、そこで一泊間を空けて晴れやかな顔を浮かべた。
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