ママの手料理 Ⅱ
画面のなかの彼女は、一瞬戸惑うような素振りを見せた後に控えめに笑みを浮かべて手を振ってきた。


「っ………うぅっ………っ…」


酷い、酷すぎる。


この世界は何て理不尽なんだろう、どうしてあんなにも人の事を考えられる素晴らしい少女が死ななければいけないんだろう。


動画が止まった後、机に突っ伏して嗚咽を堪えながら私はそんな事ばかり考えていた。


死なせてごめんね、と言えばいいのか、助けてくれてありがとう、と言えばいいのか。



いつだったか、急激に仲良くなった笑美ちゃんと話していた時に彼女が言っていた。


『私達下僕は、ご主人様の為なら死ぬ覚悟も出来ております。中には拒否する者もいますが、私はmirageという本当に信頼出来るご主人様に出会えた為、彼らの為なら死んでも構いません』


と。


それはもしかしたら、下僕候補者と下僕世話係の関係でも言えることなのかもしれない。



「…ハナ、助けてくれてありがとうっ…!」


その言葉を口に出すと余計涙が溢れてきた。


目を擦り、傍にあったティッシュで鼻をかみながら、私は起き上がってもう一度動画を再生した。


彼女が生きていた証を、私を守ってくれた勇気を、何度も目に焼き付けておきたくて。


トイレの中で話し始める彼女を再度見つめ、私は涙を浮かべつつ笑みを零した。
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