ママの手料理 Ⅱ
君を忘れない
「………」
ピッ、ピッ、ピッ……と、規則正しい機械の音がする。
左手は誰かに握られているのかほんのりと温かくて、昨夜の出来事がありありと思い出された。
(そうだ、パーティー…楽しかったな)
酔って疲れて皆が爆睡してしまった昨夜、琥珀が1人で片付けをしていたんだっけ。
それで、疲れた俺は一足先にソファーへ…。
(やば、俺も手伝わないと)
また朝まで眠ってしまったのだろうか、目をつり上げた琥珀に極限まで絞められる未来はすぐそこだ。
そんな事を思いながら、俺はゆっくりと目を開けた。
だんだんと焦点が合ってくる中、目の前に広がるのは無機質な白い天井。
隣からは規則正しい機械音がずっと鳴り響いていて、此処が家ではない事がすぐに分かった。
(……あれ、ここどこ?)
横を向こうと思っても、身体がガチガチに固まって動かせない。
視界がはっきりして頭が冴えてくるにつれ、とてつもない違和感が俺を襲った。
俺、こんな所で何をしているんだろう。
自分の身体に繋がれた無数の管を眺めながら、この疑問に当てはまる答えは1つしか思い浮かばなくて。
(……俺、夢見てたんだ…)
長い長い、夢を見ていた。