ママの手料理 Ⅱ
皆はどこだ、俺はどのくらいの間ここで寝ていたんだろう。


瞬きを何度か繰り返してふと視線を下げると、そこにはずっと想い続けていた人が居た。


(あ、琥珀…)


俺の左手を軽く握ったまま、ベッドに頭を乗せてこちらを向いて眠っているその人の顔は、まるで王子様のように美しい。



壁にもたれかかりながら眠っているのは、随分記憶を無くしていた俺達の大切な家族。


無防備に半分開かれた口からは、よだれが見え隠れしていた。


(…紫苑ちゃん、琥珀…)


2人共、俺が全然起きないから待ちくたびれて寝ちゃったのかな。


ごめんね、何せ皆でパーティー楽しんでたからさ。


夢の中とは違って随分動かしにくい身体に、ゆっくりと力を込める。


琥珀の手を握り返そうと思ったのに、実際は手を僅かにしか動かせなかった。


その途端、


「……大丈夫だ、大也…」


むにゃむにゃと寝言を言いながら琥珀が俺の手を握り返し、ベッドに頭を付けたまま目を開けた。


その目線が、流れるようにシーツから俺の顔へと移動していく。


「………え」


そうして俺の顔を捉えた瞬間、そのとろんとした目に光が宿って大きく見開かれた。


「…お前、起きたのか、…?」


信じられないと言いたげに目を擦った彼は、掠れた声で俺に呼びかけた。
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