ママの手料理 Ⅱ



それからどうなったかは言うまでもない。


「…うわ、やだ私寝てたの?最悪、身体固まっちゃってるし…」


頭が壁にぶつかった衝撃で目が覚めたらしい紫苑ちゃんは、よだれを啜りながら俺の方を見て一瞬よろけ。


「え、…大也?起きたの…?私、誰か分かる?」


地球外生命体でも見るような目で俺の顔を舐め回すように見て、


「っ……大也あぁああ…!ずっと、ずっと待ってたんだよ…!うわぁぁあん……あ、ナースコールしないと!mirageにも伝えなきゃ!」


俺が瞬きでうん、と表現した瞬間、琥珀にも負けない勢いで泣き始めて。


すぐに彼女がmirageに連絡してくれたおかげで、残りのメンバーも店の営業をほっぽり出して駆けつけてくれた。



「っ……うわぁああ大也あぁああああ!」


我先にと病室のドアを開けて走ってきた仁は、俺の顔を見るなり膝から崩れ落ちて呼吸困難寸前に陥るまで号泣し、


「凄い心配したんだから…!本当に良かった、…おかえり、大也」


安心で泣きじゃくる笑美を支えながら枕元の椅子に腰掛けた湊は、泣き笑いを浮かべて俺の頭を撫でてくれて、


「…お前なら、大丈夫だと信じてた」


珍しくパソコンを持っていない銀子ちゃんは、安心した様に呟いた直後からずっと涙が零れないように天井を見上げていた。
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