ママの手料理 Ⅱ
「全員、一時は屍みたいになったんです…。でも、大也さんが戻ってきた時に褒めてもらいたくて、怪盗パピヨンを全滅させたんです僕!体調が良くなったら沢山褒めて下さい」


屍か…それは申し訳ない事をしたな。


免疫力が落ちている俺に気を使っているのか、マスク姿の航海がピースサインを向けてきた。


「…パピヨ、…?」


怪盗パピヨンと言えば、下僕養成所を作って紫苑ちゃんを誘拐した極悪非道極まりないグループではないか。


しわがれた声を出すと、


「そう、あのパピヨン!笑美ちゃんもそこから来たんだよね?航海と壱さんが攻め込んで、リーダーの染井佳乃って人を倒したんだよ」


俺の手を優しく握りながら、紫苑ちゃんが報告してくれた。


(2人だけで?夢と一緒だ、凄いな)


夢では俺と仁が攻め込んだけれど、現実世界ではやはり仁は闘えないらしい。


まあそうだよな、仁は誰よりも臆病者だから。



俺は何とか口角を上げて、不格好な笑顔を作ってみせた。


つられて、こちらを見ている紫苑ちゃんの口角も上がる。


「そうだ、1番この病室に来てたのは琥珀なんだよ。大也がこうなっちゃった事に凄い責任感じて、ほぼ毎日通い続けて…ねえ?」


その直後、ふっと何かを思い出したような顔をした彼女は、同意を求めるように2人のmirageを見上げた。
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