ママの手料理 Ⅱ
『あの日、お前んとこのラムダってクソ幹部が大也に彼岸花の毒の入った液体を注射した。同じく注射されたラムダはこの間ポックリ逝っちまったが、あいつはまだ耐えてる。…お前なら何とか出来んだろ』


随分前から、ラムダが変な液体を試作してはマウスを死なせているのは知っていた。


けれど、俺は心理学を専門としているから医療や花の知識はこれっぽっちもない。


それでも琥珀が俺を頼っているから、断って見捨てられたくないから、大也を助けたいから、俺は迷わずに頷いたんだ。



その後は、もう怒涛のような日々を過ごした。


情報屋として得た知識を総動員し、たまに此処を訪れる琥珀に情報共有をして、面会に来てくれた銀河と薬の作り方を考えた。


そうして、ついこの間皆の思いが詰まった抗体薬が完成した。


それなのに何を言っているんだこの警察官は。


薬を投与しなくて済むということはつまり、


(大也死んだの……?)


あんぐりと口を開けて固まった俺を舐めるように見ながら、彼は口を開いた。



「…大也が目を覚ました。あいつ、自分の力で抗体作りやがった」



嬉しいはずなのに、彼はそれを隠すように苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ。
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