ママの手料理 Ⅱ
「せっかく調べたのが全部水の泡だ。…ったく、あいつには脱帽だな」


どこか遠くを見ながら、そう吐き出した。



「っあ、………目を覚ました…?…っ、良かった…!」



対する俺の目からは、大量の雨が零れ始め。


これで大也が死んだらその罪を背負って自殺しようと本気で考えていたから、何だか肩の荷が一気に下りたような気分で。


もちろん、これまでもこれからも罪の意識はずっと持ち続けるし償い続ける。


(あー良かった、本当に良かった…!)


病室でmirageの皆と笑い合う大也の姿が目に浮かび、俺はまた新たな涙を零した。




「…感動に浸ってる所申し訳ないんだが、そう言えば仁から伝言を預かってる」


涙と鼻水を服の袖で拭いていた俺は、彼の声でゆっくりと顔を上げた。


ポーカーフェイスのせいで何を考えているかまるで読み取れない警察官は、ポケットから小さな紙切れを取り出しておもむろに読み始めた。


「『伊織へ。店長が居ないせいでお店の何処に何があるかさっぱり分かりません。店員不足なのでこの頃航海をこき使ってます。この店潰したくないなら、早く刑期終わらせてさっさと帰ってきて下さい。この僕が頼んでるんだから、言う事聞かないと分かってるよね?』……だとよ」
< 266 / 273 >

この作品をシェア

pagetop