ママの手料理 Ⅱ
「でも俺が目覚めた時、手握ってくれてたもんね?ね?俺めっちゃ嬉しかったんだから!」


何とか彼の視界に入ろうと体勢を変えてみるけれど、いやらしい琥珀はわざと目を逸らしてくる。


「ウザいしつこい消えろゴミクズ」


「やだなぁそんな事言わないでよー!俺が死んだら泣いちゃうくせに」


いつだったか夢の中でもぶつけた台詞を口にすると、彼は口元に薄く弧を描いた。


「お前、俺から何か聞くまでは死ねないって言ってただろーが」


「そうだよ好きって言ってもらわなきゃ死ねませんけど文句あります?俺ばっかり愛ぶつけて、完全な一方通行で困ってるんだから!」


嘘、全然困ってなんかない。


本当は、琥珀に拒否されていない事に心から有難く思っているんだよ。



「……俺ね、寝てる間に夢を見たんだ」


恥ずかしいから誰にも言わないはずだったのに、その言葉が自然と口から零れていた。


薄笑いを浮かべていた琥珀が真顔になり、黙って俺を見下ろした。


「夢の中で、mirageの皆と色んな事して…。その時はそれが現実だと思ってたんだけど、たまに琥珀の声が聞こえたんだよね」


大丈夫だ、大也。

大也、良く頑張った。

いい加減、目覚めてくれよ。

やっぱりお前は凄い奴だよ、大也。


その声が聞こえる時はいつも左手が温かくなって、愛する人が俺を呼んでいると分かって凄く胸が高鳴った。
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