ママの手料理 Ⅱ
「……でね、私大也が居ない間に笑美ちゃんの友達と会ってきたの!ほらこの子!」
その後、俺は紫苑ちゃんのとてつもない長話の聞き手にまわっていた。
彼女は俺に話したい事が溜まっているらしく、かれこれ30分は話を聞き続けている。
まあ、どれも飽きないし楽しいから良いのだけれど。
どれどれ、と笑顔を浮かべながらスマホを覗き込んだ俺は、
「ん!?げほっ、げほげほっ…」
そこに写っていた子に驚き過ぎてむせ返った。
「やだ汚い!カス飛んだ最悪!ねえ拭いてよほら早く!」
案の定彼女に目をつりあげて怒られた俺は、布巾で自分の服を拭きながら、
「その子、名前は……?」
恐る恐る質問してみた。
「この子はハナっていうの。自分の主人と養子縁組して法的に家族になったらしくて、めっちゃ幸せだって言ってた!」
「ハナ………」
彼女のスマホ画面に写っていたのは笑美と紫苑ちゃん、そして控えめに笑いながらピースサインをした少女の姿。
その子の頭にはピンク色の蝶の髪飾りがついていて、俺達を助けるために肉の鎧となって死んでいった夢の中のあの子そっくりで。
「ああ、生きてたんだ…」
夢の中とは違い、ちゃんと主人から名前も付けて貰えて、あんな汚らしい下僕養成所から出て陽の光を浴びれたんだ。