ママの手料理 Ⅱ
良かった…、と胸を撫で下ろす俺に、


「生きてたんだ…ってどういう事?」


紫苑ちゃんが無邪気に質問してくるから、


「ああいや何でもない、こっちの話だよあひゃひゃひゃひゃ」


気味の悪い笑い声を上げて対処しておいた。




「あれから、もう1年が経ったんだね…」


しばらく沈黙が訪れた後、俺はしみじみと呟いた彼女に頷いて同調した。


「早かったね…色々あったし」



俺の中では、OASISの一件の後で紫苑ちゃんが行方不明になって必死に捜索して、戻ってきたと思ったら記憶喪失で、
彼女に否定されて落ち込んで、薬を作る為に皆が奮闘して、
隠れんぼ中に彼女に酷い事を言って、記憶が戻った後のパーティーを楽しんだと思ったら目が覚めて……と、夢の中の出来事が濃過ぎてある意味怒涛の1年だった。


紫苑ちゃんの中では、OASISの一件の後手術を受けて、俺が意識不明の重体で、屍のような状態になっても自分達を鼓舞して、
怪盗mirageとしても活動して、そして俺が目覚めて……と、沢山の喜怒哀楽を経験した1年だったのだろう。



「去年、私がサンタさんにお願いした内容覚えてる?」


ポテトを食べていた彼女がふと尋ねてきて、俺は深く頷いた。


「家族皆が揃って、笑顔で過ごせますように。ってやつでしょ?」


俺の問い掛けに、彼女は何も無い空間をぼんやりと見つめながら頷いて。


「去年は大也と伊織が居なかったの。……早く、皆が揃ってる所を見たいな」


ぽつりと呟いた。
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