ママの手料理 Ⅱ
この数週間で培った自分の勘と、穴の空いたカーテンの隙間から差し込む太陽の光から察するに、夕飯までにはまだ時間がある。


本来なら夕飯まで0823番が来るのを待つのが吉だろうけれど、今の私は早くエプロンを彼女の元に渡したくて。


(探しに行こうかな…)


部屋の外に出る時は下を向いていないといけないから、周りの様子は何一つ知らなかった。


(でも、自分の家なら迷子になるはずないよね!)


此処は大叔母さんの家であり、私の家でもある。


「0823番を見つけてすぐに帰れば大丈夫!」


よし!、と気合を入れた私は、2つのバスケットを持ってゆっくりと部屋のドアを開けた。


自分の家のはずなのに、どこか悪い事をしているような罪悪感が身体にまとわりついていた。



「え、………」


音を立てないようにドアを閉めた私は、目の前に広がる光景に口を半開きにしたまま固まってしまった。


何故なら、“家”だと思っていたこの場所は、家とは程遠い程の広さを誇っていたから。


私のいる廊下の両側には何個もの部屋があり、その扉には番号が振られていた。


(私のは、No.12なんだ…)


まるで学校のような広さに驚きながら、自分の部屋番号を確認した私はゆっくりと歩みを進めた。
< 38 / 273 >

この作品をシェア

pagetop