ママの手料理 Ⅱ
「…誰、」


そう呟いた瞬間、


「いっ、……たああぁああっ…、!」


今まで感じた事のない激痛が、頭を駆け巡った。


持っていたバスケットを床に落とし、私は耐えきれずにその場にうずくまる。


せっかく畳んだエプロンがぐしゃぐしゃになるのもお構いなしに、私は頭を押さえて床を転げ回った。


「い、痛い痛い痛い痛いっあぁああ!」



「じゃあ、あんたもそろそろイイヨちゃんの様子を見て来なさい。……ってイイヨちゃん!?何してるのどうしたの!?」


すると、コツコツいうとハイヒール独特の音がして、直後大叔母さんの悲鳴にも似た声が聞こえた。


「何してるの0823番!彼女を部屋に運びなさい!」


「はっ、はい!仰せのままに!」


声を出す余力も自分の足で立つ力も失われていた私は、0823番と大叔母さんに抱きかかえられるようにして部屋に連行された。



2人に連れられて室内に入った私は、まず布団に横になり大叔母さんから飴を口に含まされた。


その飴の味をりんごだと認識するとすぐ、あれ程激しかった頭の痛みが緩和されて。


汗をびっしょりかき、肩で息をしている私の耳に、大叔母さんの静かな声が聞こえてきた。
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