ママの手料理 Ⅱ
また頭がぼんやりしていて、大叔母さんに返す言葉も上手く探せない。


そんな中、1つだけ浮かんだ疑問を頭の中で反芻した私は、眠気に身を任せてそっと目を閉じた。


(記憶が混同って、…私、何の記憶と混同しているの?)




次に目が覚めた時、私の左手首は鉄格子の窓ーあのボロボロのカーテンがついている所だーから伸びる鎖と括り付けられていた。


その鎖のせいで私はドアまで辿り着くことも出来ないし、1人で部屋を歩き回る事も出来ない。


勝手に部屋の外に出てしまった罰として部屋には鍵が付けられ、0823番と部屋の外に出る時は目隠しまでされるようになってしまった。


私が寂しくないように、と、0823番は毎食一緒に食事をしてくれるようになりー本当の理由は監視だろうー、私が舐めなければいけない飴の数は一食1粒から2粒に増えた。


飴を舐めたらいつも頭がぼーっとして、上手く物事を考えられなくなる。


その時に0823番が話してくれる私の昔話を聞いて、返事をするのが精一杯。


そんな生活を続けていても、私はこの環境に疑念すら抱かなかった。


あの飴のおかげで私の頭痛は改善しているし、0823番は優しいし、たまに様子を見に来てくれる大叔母さんからは、私を本気で心配しているのが伝わるから。



けれど、あの日私が長時間かけて畳んだエプロンの事は、誰からも褒められる事はなかった。
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