ママの手料理 Ⅱ
「…では、もし紫苑さんから何か連絡が入りましたらこちらに連絡をお願いします。よろしくお願いします」


滞在時間は、わずか15分程で終わってしまった。


中森から名刺を受け取った叔母は頷きながら、


「噂で聞いたんですけど、あの子、確か凄い額の保険金がかけられていたんですよね…?もしそれが本当なら、それ目当ての人が何かしたとか、」


と、独り言のように呟いた。


(…こいつ、本当に紫苑の親戚か?)


そんな彼女の態度に、俺は驚きを隠せなかった。


彼女の言う“何か”が“殺害”を意味しているのは一目瞭然だし、義理だろうと何だろうと自分の姪に向かって言うような台詞ではないだろう。


聞き込みを重ねた今、紫苑が谷川家からも丸谷家からも毛嫌いされていたのは嫌でも伝わってきた。


この人は、俺達怪盗mirageが怪盗OASISを壊滅させた事も保険金をチャラにした事も何も知らない。


(だからってこの態度…ふざけんのも大概にしろよ)


それでも、許せないものは許せない。



玄関先で靴を履いた俺は、振り返って笑顔で彼女に挨拶をする。


「ご協力ありがとうございました。…それと、彼女の保険金の事なら事実無根ですのでご安心下さい」


俺が笑顔で丁寧な口調になった事に驚いたのか、彼女は先程とは一転して口元に笑みを浮かべた。
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