ママの手料理 Ⅱ
「そうでしたか、それなら良かった。こちらにまでいらない疑いをかけられたら困りますのでね」


(ああ、やっぱりこいつ駄目だ。一旦死んだ方がいいだろうな)


そう言いたいのを必死で押し殺した俺は、


「それともう1つ、」


と、言葉を続けた。


「お前、そんなんでよく紫苑の叔母やれてるなぁ?性根腐ってんな、あいつを下に見んのもいい加減にしろ…もしそれ以上無駄口叩くなら逮捕するぞ」


本当は逮捕するぞ、ではなく殺すぞ、と言いたかったものの、それを必死で我慢した俺自身に拍手を送りたい。


思った以上にスラスラ出てくる悪口と俺の射殺してしまいそうな瞳に睨まれた彼女は、分かりやすく息を飲んで顎が外れそうな程ガクガクと頷いた。


「…あ、お邪魔しました!」


それ以上何も言わずに歩き始めた俺の背中を見た中森が、慌てたように挨拶をして俺を追う足音が聞こえてきた。



「…なんか文句あるか」


覆面パトカーの運転席に座った俺は、シートベルトを締めながら助手席の相棒に声を掛けた。


一般市民にここまで暴言を吐いたのだ、どうせまた小言を言われるだろう。


そう考えながら、俺はアクセルを踏んでゆっくりと車を発進させる。


「……いえ、今回の琥珀さんはすっごく格好良かったです!尊敬しました!」


しかし、彼女の口をついで出たのは思ってもみなかった褒め言葉。
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